まえがき
街を歩いていると、交差点で「ピヨピヨ」「カッコー」といった音を聞いたことがありませんか?これらの音は、歩行者用信号機に設置された視覚障がい者向けの音響装置から流れているものです。
しかし、それぞれの音がどんな意味を持ち、なぜ違う種類の音が使われているのかを詳しく知っている人は意外と少ないのではないでしょうか。
本記事では、信号機から流れる「ピヨピヨ」と「カッコー」の音の違いや、その背景にある交通バリアフリーの工夫について、わかりやすく解説します。
ピヨピヨとカッコーの違いは「進行方向」と「道路の幅」だった
実は、「ピヨピヨ」と「カッコー」は、単なる音のバリエーションではなく、明確なルールに基づいて使い分けられています。
- 「ピヨピヨ」:交通量が少なく、幅の狭い道路(主に南北方向)
- 「カッコー」:交通量が多く、幅の広い道路(主に東西方向)
この使い分けは、視覚障がい者が音を頼りに進行方向を判断するための重要な手がかりになっています。
たとえば、南北方向に渡る横断歩道では「ピヨピヨ」が鳴り、東西方向では「カッコー」が鳴るように設計されているため、音を聞き分けることで自分が進む方向を把握できるのです。
なぜ「鳥の鳴き声」なの?
音響信号には、耳障りにならず、かつ聞き取りやすい音が選ばれています。そのため、人間にとって自然で印象に残りやすい「鳥の鳴き声」が採用されました。
特に「ピヨピヨ」と「カッコー」は、子どもから高齢者まで認識しやすく、雑踏の中でも埋もれにくい音として定着しています。
異種鳴き交わし方式とは?
信号機によっては、同じ交差点内で「ピヨピヨ」と「カッコー」の両方が鳴ることがあります。
このとき、両方の音が同時に鳴ってしまうと、どちらの方向に進んでいいのかが分かりづらくなってしまいます。
そこで採用されているのが「異種鳴き交わし方式」。これは、2つの音が交互に、少しタイミングをずらして鳴るように設定されたものです。
こうすることで音が混ざらず、聞き取りやすくなるため、より安全な横断が可能になります。
「とおりゃんせ」などのメロディ式信号もあった
一部の信号機では、昔から親しまれている童謡「とおりゃんせ」や「故郷の空」などのメロディが流れるタイプも存在しています。
メロディ式は記憶に残りやすく情緒もありますが、雑踏の中では聞き取りにくい場合もあるため、現在では「ピヨピヨ」「カッコー」などの擬音タイプが主流になっています。
また、メロディは地域によって異なる場合があるため、統一性のある擬音式の方が安全性が高いという背景もあります。
信号機の音は視覚障がい者にとって命綱
視覚に障がいを持つ方にとって、信号機の音は「歩いていいかどうか」を判断するための重要な情報源です。
日中でも音が聞こえにくい場所や、車の騒音が多い場所では、音響信号があることで初めて安全に横断することができます。
私たち健常者にとっては当たり前に見える青信号ですが、それを音で判断している方がいることを意識することも大切です。
音の出る信号機がない場所もある?
実は、すべての信号機に音がついているわけではありません。住宅街などでは騒音対策のために音響装置がオフになっているケースもあります。
そのため、視覚障がい者が事前に「音の出る信号」を把握しておくことが重要とされ、自治体や交通安全団体がマップやガイドの配布を行っている例もあります。
おわりに:音の違いを知れば優しさが広がる
信号機から聞こえる「ピヨピヨ」や「カッコー」の音には、視覚に障がいがある方への配慮や、交通安全のための工夫がたくさん詰まっています。
音の違いを理解することで、ただの生活音として通り過ぎるのではなく、そこに込められた意味や配慮に気づくことができます。
身の回りの音に少しだけ意識を向けてみることで、私たちの暮らしはもっとやさしく、安全なものになるのかもしれません。